法人成り VS 個人事業主?メリット・デメリット・タイミング
個人事業主と法人の掛け持ちについては、大きなメリットがありませんでした。
では、個人事業主として事業が拡大し、売上が大きくなってきたら、会社設立をして法人になったほうがいいのでしょうか。
簡単に法人と個人事業主の違いを見てみましょう。
「法人」とは個人(人間)と同様の権利と義務を与えられた組織を指します。会社設立を考え法人になるには、定款を作り、会社の種類によっては出資金を募り、設立登記をする必要があります。
「個人事業主」とは個人である事業を行う人です。税務署に開業届を提出するだけで、個人事業主になることができます。
法人と個人事業主は設立の仕方だけでも全く違います。
ここでは「法人成り」と「個人事業主」のメリット・デメリット、タイミングについて解説します。
法律と行政手続きの専門家
行政書士 高柳麻紀
法人のメリット・デメリット・タイミング
【メリット】
①税金面
法人にかかる税金は、「法人税」「法人事業税」「特別法人事業税」「法人住民税」「消費税」「地方消費税」がありますが、法人税について見てみます。
《法人税》
区分 | 適用関係 (開始事業年度) |
|||||
平28.4.1以後 | 平30.4.1以後 | 平31.4.1以後 | ||||
普通法人 | 資本金1億円以下の法人など | 年800万円以下の部分 | 下記以外の法人 | 15% | 15% | 15% |
適用除外事業者 | 19% | |||||
年800万円超の部分 | 23.40% | 23.20% | 23.20% | |||
上記以外の普通法人 | 23.40% | 23.20% | 23.20% |
(国税庁ホームページ:法人税の税率より一部抜粋)
法人税は法人の所得に対してかかりますが、最高税率が23,2%です。個人事業主の場合、所得額によって税率はどんどん上がります。
②信用面
一個人よりも、株式会社、合同会社、NPO法人などは「組織」という側面が思い浮かびます。また、会社設立には法にのっとって作成した定款や登記をしているという事実があります。組織として機能している法人は信用度が高くなります。信用度が高くなると、融資の相談や人材採用で有利になるでしょう。
③取引先が増える(?)
信用度が高くなれば、個人とは取引しないという企業や団体との仕事が増えるとも言えます。特に公共機関などは個人事業主に仕事を依頼するでしょうか。取引先が増えれば、事業の幅も広がり、仕事量も増えるでしょう。
④肩書が付く!
個人事業主の「代表」よりも、『代表取締役社長』の肩書でやる気のアップにつながることもあります。弊社には「どうしても一生のうちで社長になりたかった!」との想いから個人事業主から会社設立をされた方もいらっしゃいます。同じ仕事をするならば、モチベーションを高く持って仕事に励みたいですね。
【デメリット】
①社会保険の加入
法人は社会保険の加入が義務となります。雇用人数や業種にかかわらずです。社長一人でも健康保険と厚生年金保険に加入することになります。会社負担分があるため、従業員が増えると保険料の支払額も増えます。
②法人税の均等割
法人の場合、赤字決算となっても、7万円の法人税は必ず支払わなければなりません。
③事務作業
個人事業主に比べて、事務作業が煩雑になります。税金の計算の仕方、経費の処理など個人の知識では会計処理が難しくなるでしょう。そのため決算書類など顧問税理士にお願いする法人がほとんどです。
【タイミング】
一般的に利益が800万円程度安定的に続くようであれば、法人成りをした方がよいと考えられています。個人事業主で納める税率より、法人税の税率のほうが低くなるため節税となります。
また、個人事業主は1月から12月の事業年度で決算(確定申告)と決まっていますので、決算を終わらせてから法人としての事業を始めると決算をわける必要がないことも一つのタイミングと言えるでしょう。
自分の事業をどれだけ大きくしたいか、事業の幅を広げたい、早めに法人にして大きな組織を作っていこうと思った時!それもタイミングですね。
個人事業主のメリット・デメリット・タイミング
【メリット】
①開業のしやすさ
個人事業主は税務署に開業届を出すだけで仕事が始められます。会社設立に比べると初期費用はいらないと言えます。
②税金面
個人事業主の場合、所得金額によって税率が決まります。課税所得が195万円以下なら5%、4000万円を越えると45%にもなります。課税所得が330万円以下であれば、法人税の税率より低くなっています。
③事務負担
個人事業主の場合、シンプルな会計ソフトでも、比較的簡単に確定申告ができます。取引数や事業規模が法人ほど大きくない場合、自分で会計処理を行う人が多いでしょう。
【デメリット】
①信頼面
事業を行う上で特に支障にはならないと思いますが、法人と比べると信用度は低いと言えます。資本金を持って設立している会社と、公に資産がわからない個人事業主、銀行はどちらに融資しやすいでしょう。個人事業主が簡単に大きな融資は受けにくいですね。
②赤字の繰越し
個人事業主で青色申告の場合、赤字の繰越しは3年までです。対して法人は10年となっています。繰越しとは、赤字になって翌年黒字になった売上と相殺できることを指します。今年度が50万円の赤字で、翌年度200万円の黒字になった場合、赤字を相殺して150万円の黒字になります。繰越しても赤字が残る場合、また翌年相殺・・個人事業主の場合これが3年しか出来ないということです。
③収入の不安定
個人事業主は組織的に事業を展開しているわけではないので、自分が事故や病気になったときは収入が減ってしまいます。
【タイミング】
個人事業主になるタイミングは、働きだす最初から個人事業主になる場合と、サラリーマンから独立して個人事業主になる場合が考えられます。自分の腕一本で仕事をしていこうと最初から一人親方として個人事業主になる方は多いと思います。
サラリーマンから個人事業主になろうという方は自由を求めて独立するときでしょうか。毎日決まった時間働き、決められた仕事をし、定年になれば退職になります。「個人」の色は出しにくいのがサラリーマンです。安定感はあるにせよ、仕事の内容や企業によっては、「自分の能力であればもっと稼げる」「休日など融通が利かない」といった不満もあるでしょう。今は副業がOKな企業も多くなりました。副業を始めて、そちらを拡大するために会社を辞めて独立したい!というタイミングもあるでしょう。
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